〜第二話「危機一髪時に助けた存在の秘密」〜  俺は何度でも立ち上がる。負けたなら、その負けた分だけ強くなって戻ってくる。負け惜しみが駄目なら勝ち誇ればいいじゃないか。そう何度も負ける相手ではない。一度、意識が戻ったのであれば、俺は既に超人と化しているに違いない。  そう、自信を持って彼女を助けるべく、俺は虹色に光る剣を両手で持ってその圧力を防ぐ。魔力が剣に入ってくることが、俺の第六感が疼いている。  俺が持っているのは、七彩剣(ななさいけん)「虹蒼剣(レイン・ブローウ)」。この剣には幾つかのメリットがある。一つ目は、相手が使った呪文をこの剣で防げることが出来れば、自動的に呪文の中に存在する「魔力」を吸収することが出来る。それは自分よりもレベルが低い場合のときである。高い場合は魔力吸収(デグラリバース)と言えばいいのだ。そして二つ目は、魔力を吸収した量でどんなレベルの魔法が使えるか、変わるのだ。これは、俺の第六感と繋がっており、自分でも分かるのだ。不思議に。三つ目は、この剣は七色に光る。それにも効果があって、色によって使える魔法系統が分かれる。赤は火、橙は電気、黄は光、緑は自然、青は水、藍は風、紫は龍なのだ。何色にも光っていなければ、メリット一つ目のように魔力吸収だけしか使えない(現段階で分かっている事)。  魔力とは使用魔法の三割を占めており、残りの七割は空気中に存在している魔力結合元素のおかげで魔法が使えているのだ。初級>中級>上級>最強(現段階で分かっている事)の順で、巨大になればなる程、魔力の量が変わっていく。最強の場合は五割。で、吸収できる魔力の量はそれの半分ぐらいなのだ。四捨五入はされるそうだ。  「!?な、何故我の魔法を打ち消すことが出来る!?」  激しく動揺しているのが丸分かりだ。彼女は・・・。何処にいるのかすら分からない。  「どうやら、今度の相手は俺のようだ」  俺は両手で剣を構え持つ。  「この野郎!!片手潰圧(ハンドプレス)!」  真上から手形の圧力が降りかかっているのが俺には見えた。それを喰らわないように、その範囲から避ける。そして、俺は彼に襲い掛かる。  「圧押飛(コンバート)!」  真正面から放ったようだが、俺はそれを真っ二つに切る。現時点での剣の色は無色。真っ二つに切った圧力はその時点で消える。そして、俺は斬りかかった。  「うらあっ!」  力一杯縦に振る。彼は難なく右に交わしたけれど、右腕一本を貰った。肩からバッサリと。  「うぎゃあああああっ!」  彼は叫ぶ。  「まずは一本」  このテンポで行けば、難なく倒せるんじゃないかと思っていたら、思わぬ場所から俺は攻撃を喰らった。  「炎竜刃(ブレイスディリキ)」  それは俺の右肩に切り傷をつける。  「つっ!?」  それは火を使う魔法使いだった。  「ア、亜鎧奈(アンディリア)様・・・私はまだ戦えます・・・」  そう言って出てきたのは左腕を失った魔法使いだった。彼は彼女の魔法に耐えて生き延びていたのだろう。  「火燐(ウィルジ)、お前は生き残っていたか。こいつの相手をしろ!」  「はっ、亜鎧奈様。火竜魔光線(フィルディアエクスポンシー)!!」  彼が放ったのは破壊光線で、それを火が伴った竜に変えただけである。  無色では対抗しきれなくなったのか、剣は咄嗟に青色に変わり、俺の目も青色に変わった。俺は剣の魔法吸収メータを見る。それはLevel2を指していた。  「水刃波(クリアランティア)」  俺は横に一線切り、水を伴った空中を移動する刃を放った。それと火竜魔光線は相殺し、蒸発した。青色はすぐさま、無色に変わり、俺の目も黒色に変わる。  「水系統か・・・。なら、これではどうだっ!鬼火周八(フシュメンドナ)」  すると、俺を中心として八方向から、紫色を伴う火が現れた。そして、それは徐々に回り始め、スピードが上がっていく。  「一つ忠告しておくが、その鬼火は水で攻撃しても消えないぜ」  俺はどうしようかと思っていたら、俺との間を狭めてきていた。仕方ない。剣の色と目の色を藍色に替え、Level0の呪文を唱えた。  「跳躍飛(ジャンピング)」  迫ってくる鬼火の輪から脱出する。そして、輪が小さくなり鬼火はお互いぶつかって消失する。  「!?風も使えるだとっ・・・」  こちらも動揺している。俺は攻撃をしたいが魔力を吸収しないと打てない。何か魔法を唱えてくれ・・・。俺はそう願うしかなかった。  「こうなれば、上級ランクのあれをするしかないっ!!」  そして呪文詠唱へと入っている。その間に、無力へと替える。  「炎空震刃(フィルディアラガ)!!」  空気を震動させつつもこちらへと向かってくる。よし来た!  「魔力吸収!!」  俺の剣に当たるや否や、相手が唱えた魔法は消え全て俺の元へ来た。そのパラメータはLevel3を示している。  「!?何故、色んな系統を・・・」  彼は激しく動揺している。今がチャンス。魔力全てを使ってやる!  剣と目を橙に替え、こう唱えた。  「震空断切波(アヴォリメンド)!!」  俺は剣の先を下にして、そこから上へと振りかざす。すると、彼へ一直線に電気を帯びた刃が立ち向かう。  「う、うわあああっ!!」  結果、俺の勝ち。彼は成す術もなく、ただ慌てるだけで避けることすらしなかった。  「さて、後一人」  俺は後ろを振り返り、亜鎧奈を見た。彼はまだ、右肩から出血している部分を治療中だった。どうやら、俺と彼が戦っていた間に出血が治るまでの時間稼ぎだったそうだ。  「ふ、飛蝶(フィライ)!」  圧力を俺に向けて飛ばす。だが、無色の剣なのでそれを打ち切る。  「止めろ!俺はまだ生きたいんだ!」  自分の死を恐れているのか、魔法を唱えることをしなくなった。俺は留めを指すべきなのだろうか、迷った。  すると、第三者が彼に向けて放ったのは銃弾だった。それは彼の頭と心臓を狙い打つ。これが出来るのはあいつしかいないわけだ。  「がはっ・・・」  亜鎧奈は頭をうな垂れ、この場から消える。他の奴らと違って、屍と化さなかった。  俺は銃弾が放たれた場所を見る。そこには木材に埋もれている彼女の姿が見えた。どうやら、最後の力を使って打ったようだ。ちぇっ、いい所を持ってかれたぜ。などと、考えるまもなく俺はその場所へと移行した。彼女を助けてやらなければ。    一方、亜鎧奈が移転したのは裏路地だった。彼の姿を見た者は仰天し、この世には存在しない彼へと聞いた。  「一体、何があった亜鎧奈・・・。派手にやられてよぉ」  男は一般人の姿をしているため、本来の姿が分からぬが同じ組織って事は分かる。  「ま、十番目である亜鎧奈がやられるこたぁ、予想済みだ。今度は俺の番だな」  男はそう言ってその場から離れようとしたが、同じ組織の人物に呼び止められて立ち止まった。  「何処へ行く、九番目。いや、鎌美舞(アディタガ)」  鎌美舞は言い返す。  「俺に何か用があんのか?あいにく、今は聞く気にならねぇ。八番目、裂踊鎖(チューブリオ)」  裂踊鎖は女で、彼よりも上の地位に存在する。けれど、彼は敬語を使わず、自分がお偉いさんかのように喋っている。  「軽はずみな行動は止めておくべきよ。零様からの命令に背いたらどうなるか、分かっているんでしょうね?」  「ったく、命令命令うるせぇんだよ。俺は意の向くままに自由行動をしてぇんだよ。こんな組織に入らなければ良かったぜ」  彼は溜息をつく。  「けど、今年の龍神秀(デグラシア)の十翁(テンベイ)は荒れるよ、きっと」  「そこは同意だ」  真っ暗な雲から一つの雷が落ちる。土砂降りを告げるかのように。  「ふん、くだらねぇ話は置いといて、今を見ようぜ、裂踊鎖」  「そうよね、戻りましょう。連絡支部へ」  そしてもう一本雷が落ちる。その雷は先ほどの雷よりも強く、輝きを増していた。その雷によって、見られた二つの影は、大きな鎌を持った男と、両手に鎖を持ってビュンビュン振り回している女の姿を映した。  現在時刻、六時。雨が降りそうで、傘がなくて俺は困っていた。だから俺はただ天に祈ることしか出来なかった。神よ、どうか俺が家に帰るまで雨を降らさないでおくれ・・・。  ま、そんなことは片隅に置いといて、現況をどうにかして把握をしよう。  屋上で木材の下に埋もれていた彼女を助け出し、おんぶして帰っているわけだ。第三者からの視線が痛いぞ・・・。当然、彼女は死んではいない。あれだけ威勢がいいからな。さっきから彼女のテンポ良い吐息が俺の首筋に当たって、俺はゾクゾクしていた。  俺の家はこの学校から意外にも近くて便利だと知ったのは、これが初めてだろう。徒歩で十分程度だ。それに、帰宅するや否や雨が降り出してきたので良かったよ。俺はすぐさま、和室にて布団を用意し、彼女を寝かした。傷だらけなので、まずは消毒しようかと思っていたけど、体中あちこちを触るのはどうかと思って、起きてからにしようと俺は考えた。  寝ている彼女をずっと見ていたのだろうか。俺まで眠たくなってきた。そして俺の意識はシャットダウンしたわけだ。  わ、私は今何処にいる!?  目が覚めて周りを見たら、誰かの家にいるのは気づいた。平凡な家の中でしかも和室。そこには誰かの鞄や、救急箱が置いてあった。  私はすぐさま、ホルスターに収納されている銃と弾薬箱を確認した。うん、両方ともある。  もう一度回りを確認したら、誰かが私の近くて寝ているのに気づいた。  私は布団から寝ている人の顔を確認する。  ・・・なんだ。あいつか。屋上で出会った、あの少年の姿。ちょっと謎に包まれた不思議な魔法使い。  私は笑み、布団を掛けてあげた。そして、家を探索することにした。  体中が汚れているため、風呂に入らなければ。  そして、風呂場へと進んだのに、何故かリビングへと着いてしまい、遂には冷蔵庫の前に来てしまった。  ・・・牛乳が飲みたい。  喉を鳴らして、恐る恐る冷蔵庫を開ける。そこには、牛乳があり、半分ぐらい残っているじゃないか。  私はそれを一気飲みするが、途中で気道に入ってしまいむせる。むせたため、牛乳が当たりに一散してしまった。  ・・・・・・。見なかったことにしよう。  空になった牛乳を机の上に置き、もう一度布団が会った場所へ戻る。途中、彼の足に躓いて倒れてしまった。  「ふぎゃっ!?」  額に直撃である。でも、彼は起きる気配がなかった。  「いてて・・・」  おでこをさすりつつも、廊下へいったん出ることにした。  さて、風呂場は何処だろうか。おっと、その前に服がどこにあるのか散策しておこう。  また、和室に戻り、襖を開ける。そこには、彼の服らしき物が畳んで置いてあった。  私が着れる服を探していたら、一回り小さい服を見つけた。それはジャージと思しき服である。私はこれで大丈夫なのかと、不安になっていたが、匂いでみると大丈夫だった。その匂いは彼特有のものであった。  ・・・はっ、私は一体何を・・・。  私は赤面するが、無かったことにして上下のペアを探す。  うん、あった。  そして立ち上がって周りを見るが、和室はごっちゃになっていた。私が取り出した服が色んなところに散らかっていた。  ・・・これも見なかったことに・・・  そして廊下を出て風呂場へと向かうが、一体風呂場は何処だろう・・・。  廊下は一直線に置くまで繋がっているため、まずは奥へと向かった。そこで運良く風呂場を見つけた。  脱衣所に入って私は全て脱ぎ、風呂場へと入った。  そしてシャワーをした。  ・・・ああ、いい気持ち。浴槽はどうだろう・・・  浴槽の蓋を開けて、温度を確認する。まだ暖かい。  私は浴槽に浸かって、また寝てしまった。