〜序章〜  俺が住む倉江町には、外見と内見が全て同じ高校が存在していた。それは瓜二つの人間がいるように、そっくりそのものだった。けれど、俺は何故そのように作られたのかなんて知らないし、それを知って俺に何の得があるのかと、自問自答したことがある。だから、これ以上追求はしていない。  友達もろくに出来ず、勉強も運動もまあまあ出来るところを維持している。勉強でも苦手な教科になるとだるくなってきて、する気にもなれない。ま、俺が通っているのはその噂になっている傍らの学校だが。  俺の日常と言うのは、放課後に屋上へ行って空を眺めることなのだ。これによって、俺の気分が変わるのだ。晴れの日はよく、澄み切った空が見えるので俺の気分も爽快になる。だが、雨の日の場合は、屋上へ行けても真っ暗な闇空が漂っているわけで、肝心の青い空が見えないのだ。よって、その日の気分は最悪である。  それも日常茶飯事のようになって来た頃、俺は空想と現実との境がどこだろうと馬鹿げた事を考えていた。現実とは今俺がいる場所で、望んだことが起きてはいけないのだ。だが、空想とは架空存在や、ありきたりな魔法が使えてしまう為、何でもし放題、願いがすぐさま叶えられるのだ。  ま、どっちでもいいや。  俺は普段と変わらない歩調で四階から屋上へと続く階段を登り始める。立ち入り禁止、と書かれているロープなんて通り越して、階段に置かれている荷物を避けながら登る。  この時に引き返しておけば良かったと、俺はしみじみ後悔するのだが、立ち入り禁止、と書かれたロープなんて、今まで見かけなかったことに気づいておれば俺は魔法なんて知らずに済んだのだ・・・。  〜第一話「運命的なバトル!?」〜  俺は屋上へ続く扉を開ける。普段ならば誰もいないのが、俺の中での常識。だが、今日に限って誰かがいたのだ。そして、俺の鼻を強烈に刺激する匂い。  この匂いは、・・・鉄分!?  俺は周囲を見ようと顔を回そうとしたが、目の前にいる彼女に気づいた。  その彼女の身長は俺の目線までと言ったところだろう。赤色を帯びていて、腰まで届く長い髪。そして腰の右側にはホルスターと弾薬箱はある。右手には銃をもっており、ここの制服姿だ。  だが、血の匂いがする方向ではなかった。  彼女と対立するように崩れている男子生徒からそれは発せられていた。弾は、頭と心臓の二箇所を打ち抜いている。さて、これを見て推察できるのはこれだろう。理性を保てなくなってしまって、かつ己の欲望に負けた男子生徒は、目の前にいた彼女を襲おうとして、瞬発力抜群である彼女はすばやくホルスターから銃を抜き、頭→心臓と狙ったのだろう。どうだっ!?  「後半部分は合っている」  彼女は答えたが、そこには反省の色が含まれていなかった。でもな、俺は今非常に彼女に対して怯えている。何も人を殺した奴と会話なんてしたくもないが、してしまうんだよなこれが。  「お、俺を殺さないでっ!」  俺は咄嗟に逃げようとする。  「は?何で私があんたを殺さなきゃいけないのよ。そもそも、この銃はお前に打っても当たらないよ、絶対」  その自信はどこから来るのか知りたいね。  「この銃は魔法系の中でも結構優れた代物であって、龍神秀(デグラシア)にしか当たらないよ。簡略化すると、普通の人間には弾は当たらないってことよ」  今、この世の語句かと思しき物が耳に入った。で、でぐらしあって何よ?俺に分かりやすく説明してくれ。  彼女は銃をリロードしつつも、俺に丁寧に説明してくれる。  「私は竜姫翁(メイルピア)・・・竜姫翁とはある一つの魔法組織と考えればいいわ。に私はいる。それに敵対関係を築いているのが、魔法組織、龍神秀ってこと。オッケー?」  「ま、まあ理解した。その、めいるぴあに顕在している貴女が何でこんなとこに?」  「それはこっちの台詞。何で、一般人がここに来れる?階段のところに「立ち入り禁止」って書いてあるロープを見たでしょ?」  「そんな物、あったような・・・」  俺は思い出す。・・・・・・、確かにあったな。俺はそれを越えてここに来た。ま、そんな物あっても俺はここに来ていたけどね。  「実はあのロープにはちょっとした小細工をしているのよ。それをいとも容易く跨いで来たと言うことは、効果が切れたのかな?」  ちょっと、苦笑いを彼女はする。  そこで、俺は気になっていたことを言った。  「さっき、リロードしたけどまだ誰か襲来してくるのか?」  「洞察力いいね。そうよ、龍神秀が来るのよ。だけど、それには一般人を巻き込んだら駄目と言う契約が交わされているから、貴方はここを今すぐ退散したほうがいいよ」  「嫌だね。俺はただ晴れているこの空を見たいだけだ。俺のこの日課だけはどうしても譲れない!晴れ晴れとした天気を見て俺の心境が変わると思うのか?否、変わらないのが当然だ!そしてこの場から退散するわけにもいかない。晴れ晴れとした天気では俺の心境は穏やかにならないから、俺の心境が穏やかになる光景を見せてくれ!」  俺は反論する。彼女はちょっと、困った表情を見せるが、次には驚愕した表情となっていた。  「ちっ、来やがったか」  すると、黒いフードを被った男四人が現れた。一体何処から現れたんだよ、と突っ込む暇もなく話し合いは始まった。  「龍神秀・・・。ここで会ったが一週間目。ここで成敗してやらあ!」  一週間前に会ったのかよ・・・。それに、性格まではっきりと変わっているじゃないか。その豹変は何で起きる!?  「竜姫翁からは一人かい?灼竜姫(アクウォンミーナ)よ・・・」  その中のリーダー格と言える男が、彼女に向かって言った。  「一人で充分!灼豹烈弾(ブレメル・アクライア)!」  銃からは目にも止まらぬ速さで銃弾は男に向かって撃つ。だが、男は唱えた。  「圧(コル)」  すると、目でさえ見えない銃弾を一瞬にして屋上に落とす。その銃弾は、スピードを止められたため、微動すらしていない。  「灼竜姫よ、我の能力を忘れたとでも言うまいな・・・。この能力、圧力世界(プレッシャーワールド)がある限り、我には勝てまい」  彼女は舌打ちをして、俺にこう言った。  「おい、早く逃げろ!」  当然、俺は何でこの場から逃げなければならないのかなんて知る由もない。でも、その言葉にはきっと命に落とすことに違いないと感情から読んだ。そう察知した俺は彼女から遠くへ離れる。そして、男は呪文を唱えた。  「超巨圧力(グランドプレス)!」  すると、彼女は地に倒れた。  「がはっ」  「ふん、灼竜姫よ。我を甘く見た結果がこれだ。無様だな・・・」  そして、俺の方向に視線は向けられる。  「ん?一般人がどうしてここにいる。我が龍神秀では一般人を巻き込んだら、殺すのが掟でな。さあ、安らかに永眠するがいい」  そして、彼はまた呪文を唱えた。  「手潰圧(ハンディリア)!」  そして、俺はそれを喰らう事となった。あ・・・意識が・・・・・・。  そして俺は目を覚ました。そこは、白い空間と言えるべき場所だった。上も下も前も後ろも右も左も、何処かしこも白いのだ。   ここは・・・どこだ。  こんな場所なんて、俺は知らない。  すると、さっきまで浮いていた俺の体は、地に着くなり重力を感じなくなっていた。  何だ・・・。宇宙空間にいるような感じだ。  そして、その空間の中央地点と言えよう場所に、何かしらのエネルギー源があった。球体で、しかも虹色に光っている。  俺はどうしようかと迷っているうちに、俺の体は脳内の命令を背くかのように、そのエネルギー源へと一歩一歩近づいていく。  一体、どうしちまったんだ!?  そして、それに近づくと、今度は意を反して右手が出る。そして、それに触れる。  な、何だ!?  そのエネルギー源とやらはあるテンポ毎に光る。俺の心臓の音と同じように。  もしかして、この空間とエネルギー源は俺の体内にあるのか?  そんな事を考えていたら、何かの力がどんどん漲って来た。お、おおっ。力俺に流れてくるのが分かる。  力を俺に充分与えたのか、次にはその球体から剣へと変わった。虹色に光ることは同じく、柄は蒼い。  そして俺はそれを握る。その瞬間、俺の姿はそこから消えた。  「大轟一打(グランド・ワンガット)!」  灼竜姫はリーダー格と思しき人物よりも、他にいた三人を先に倒していた。一斉に襲い掛かってくるため、一人ずつ相手に出来ない。  そして、先ほど打った弾は大いに外れ、何処かへ飛んでいった。  「ちっ。あの手を使うか・・・」  彼女は銃の初期設定を変える。そして、単発から連射へとフォルムチェンジした。それすら人間の域を既に超越している。  そして、彼女はその場で回り始めた。  「竜巻連続射撃(トルネードセリアスショット)!」  彼女が回ったそこには、竜巻ほどにも届かないが渦が出来ていて、全方位から発射されている。それを喰らった、二人は屍と化して、最終的には屍すら消えていく。  彼女は回り終える。だが、彼は彼女の背後にいた。  「!?」  「炎爆(フィレリア)」  彼女は後ろを見れずに、彼が背後で小爆発を起こしたため、背中に火傷をする。  「っっっっっ!!」  声に出せない程、彼女は熱かったのだろうか。それとも、痛かったのか。彼女は彼との間を空けようと、空中に飛んで一回りして開ける。  彼女は無言で単発へとフォルムをチェンジする。彼は呪文詠唱へと入っている。  彼女は中級と思しき魔銃弾を放った。それと同時に彼も詠唱が終わり、炎球を彼女のほうへと放つ。  「灼轟雷弾(ヴィリメルエクスバン)!」  「焼失炎大球(バクドナル・エクスリボーション)!」  銃弾と炎球がお互いにぶつかり、屋上一辺が煙に包まれる。  それが起きた為、煙の中での決闘が見れなくなったが、彼女の声だけが聞こえていた。  「死ね、大轟一打!!」  どうやら、彼女は的確に彼の居場所を突き止めたのだろう。そして、煙が晴れた頃には彼の姿はなくなっていた。  「いやあ、お見事だ。灼竜姫。三人を倒すなんて予想外だ」  彼は圧力を自由自在に操っているため、下から上へと押す圧力を制御して体を浮かしていた。そして、拍手をしている。  「はぁっ・・・はぁっ・・・」  彼女は息が切れている。先ほどから、中級以上の魔法を使っていたため、体力もろとも魔力を消耗しているのだ。  「この状況下で勝つのはどららだ?灼竜姫か?いや絶対に私だろう。灼竜姫は指一本たりともこの私に触れてない。さあ、死ぬんだ!圧押飛(コンバート)!」  彼女は避けようとしても体が動かず、彼女は吹き飛ばされる。そして、屋上に積んであった木材にぶつかり、それに埋もれてしまう。  「がはっ・・・」  彼女は意識が遠のく中、ある彼のことを思っていた。  ・・・・・・早く、目を覚まして私を助けろ・・・・・・  彼は呪文の詠唱が終わったのか、間が空いている。そして、彼は叫んだ。  「留めだ!超巨大圧迫死(グランド・デスプレス)!!」  上級を越え、最強ランクを誇る圧力が彼女の上から迫ってくる。  その時。何者かがこう唱えるのが聞こえた。そこにいる二人ではなく。  「魔力吸収(デグラリバース)!」  そう言った人物は彼と彼女の間に立ち、両手で持っている剣でその圧力を打ち消した。  彼女が思っていたある彼が戻ってきたのだ。